ワイティのものづくりブログ

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叩けば治る家電の都市伝説の真実

https://lohas.nicoseiga.jp/thumb/661665i?

叩けば治る家電はその昔沢山ありました
人も叩けば直ると信じられてた時代もあったことでしょう
その昔の家電はなにかを見るとか操作して楽しむより
なにかを温める必要が多い時代です
そんな家電に使われている部品に
サーモスタット、 リレー、真空管、ハンダ不良などがあり
それらが叩けば直る家電の都市伝説を生んだ原因ではないかと私は考えています
今でも使われていますが温度センサは機械式でサーモスタットと言うスイッチでした
このサーモスタットは温度変化で形を変え電気回路をオンオフオフにするというバイメタルを使ったものです
 
上記の画像は最近の設計の物になりますがサーモスタットの繰り返し精度や寿命計算や設計がかなり難しいものです
昔はの家電にはサーモスタットは様々な形で使われていました、何故なら安全装置だからです
これらが使われている家電の例でこたつやドライヤー、トースターなどでしょう
設計値以上の発熱を感知すれば回路を遮断させます
今でも品質管理のされていない家電ではサーモスタットが壊れて発火してしまうのもたくさんあります
逆にサーモスタットもオフの方に働き温度が上がらなくなるものもたくさんありました
その戻らなくなったサーモスタットは衝撃でオンにする事ができたのです
この復帰に必要な衝撃は軽い拍手くらいでした
実際になる具体的な事例では
数年ドライヤーを使っていると入ってくる風の入り口をホコリが段々とふさぎます
風の入る量を減らしてしまいますが、徐々に減るので使用者は気づかず使い続けます
すると出てくる風の量は減り高温の風が出ます
この高温も徐々に上がるので使用者は気づかず使い続けます
高温になるとドライヤーの内部にあるサーモスタットが働きヒーター回路を遮断し温度を下げます
この場合ファン回路は止まりません、冷風で本体の温度を下げ安全状態に持っていきます
使用者から見ると最初は暖風が出ていたのに途中から冷風になります
なぜだろう壊れたのかな?と軽くたたくと暖風が出るようになります、その後、冷風になれば、暖風が出るまで叩き続けます
いわゆる叩けば治る状態です
これ本来は叩いてもダメです
風の入り口に固まったホコリが内部に入り発火するとか考えられます
違う部分に影響が出て故障を促すことになります
取説を読み大切に使う事を心がけましょう
 
叩けば直る代表的な部品たちを見ていこう
 
リレー
このサーモスタットの問題はリレーでも似たような問題がありました
 

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リレーはコイルに電気を流して違う部分の電気を制御する部品
このリレー昔は電流制限の設計が甘いものがたくさんありました
リレーのスイッチ部分には1/1000秒以下の放電現象後、接触し導通するものです
設計が甘いと放電の熱によりスイッチは解け、固着し電気的にはつながったままになるのです
メンテ不足などで何かの原因で流れる電流が多くなれば接点の電流は設計値を超え固着します
固着が甘ければ叩けば正常に復帰します
最近はリレーはトランジスタに置き換えられたのでほとんど民生品には使われていません
リレーは機械式なので衝撃には弱いです、叩いても衝撃が伝わるような場所には使われていません
 
ハンダ不良
これはプリント基板に電子部品を電気的に接続する半田付けを原因にした不良です
 
このハンダ付けはかなりの技術が必要で設計や施工の技術が甘いと接点不良やハンダクラックなどが発生します

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ミクロの世界でくっ付いているかくっついていないかわからない状態になったとき外から衝撃があると電気的に接続され正常に動くことがまれにあります
殆どの場合はミクロの世界でくっ付いていたものが離れるので寿命を迎えることがほとんどです
 
 
真空管を使われていた代表的なものにはブラウン管テレビがあります
これは真空管を使っていたので隙間がありそこからホコリが入ることがあり、そのホコリを落とすために叩いていたと言うことがあるらしいですがこれはほぼ間違いです
放電部にホコリが入るようであれば真空ではなくなっています
テレビであれば真空管関係なく接点不良が考えられます、ギリギリテレビが映るくらいの接点の距離
叩けば正常に戻る
あと真空管が精密部品なので、これも排熱が原因で本体や部品の一部がゆがみ位置関係がずれ、正しく電子流を制御できなくなり画像の乱れにつながる
昔の電子回路は温度や形状ゆがみなどの外部影響を受けやすい設計だったのでしょう
外部からの衝撃でその位置関係が見直され偶然綺麗映るなどが主な原因でしょう
まとめ
叩けば治る製品は何度も叩かれ使い続けました
何百回とか叩かれていたでしょう、そして壊れる
 
使用者から見て叩いて治った回数 ”数百回”そして寿命
それと逆に故障でもなく安全装置が働いただけの物を
調子悪いな壊れたのかなと、叩いてみて実際にそのまま壊れた製品は
もとから壊れてたとみなされ
使用者から見て叩いて壊れた回数0回、保証の対象
生存者バイアスや成功体験は繰り返され
叩けば治る回数の方が必然的に増えていき
都市伝説ではなく事実として繰り返されたのでしょう
 
少し前のパソコンにはHDDが搭載されていました
叩けば一発で壊れる代物でした
この時代から叩けば治るは減ってきたように感じます
最近は保証の対象を減らすために外部衝撃に強いものを作らざる得なくなりました
叩いて壊れる家電も叩いて治る家電も減りました
例えば平成初期生まれのゲームボーイ
あれば落としても投げても空襲を受けても壊れないおもちゃ家電として有名です
しかし叩き方には限度が無ければ必ず壊れます
とくに設計の古いサーモスタットが使われている家電はまだまだ身近にあると思います
PSマークの無い家電はこういう部分が危険です
保証期限が過ぎ壊れているのであれば叩いてみても面白いと思います
 
そしてスマホや最近のゲーム機にはディスクが採用されていないので
もしかすると叩けば直る時代はまた来るかもしれませんね