上下開閉ドアのガススプリングの設計方法
上下開閉のドアの設計をしてみようと思います
扉の上下開閉は重労働になるので
安全順守を考えると10kg以下の負担にしなければならない事は多々ある
ヒンジが半分の重さを支えて50%以上作業者の手に掛かってくるので
扉の重さが20kgを超えるとアシストが必要になってくる
こんな感じのイメージ
車のハッチバックの場合
一番上になるにつれてガススプリングが効き保持してくれるので
ほぼ90度開くことが出来る
下の状態ではほぼガススプリングが効かない位置に配置されている
扉の重心移動と
スプリングの角度による効きの変化と伸縮による変化の計算が難しい
ストロークも制限されるしエンドに当たると壊れる
ガススプリングの設計の難しいとされている所以だろう
これイメージして設備にあてはめ設計してみたいと思う
アルミフレームを例に設計を進める
MisumiFramesでやると重さを正確に出すのが楽である
ヒンジ部を正面より奥に配置したのは
開けた時頭が当たらない位置
作業者側の通路が大きくとられているとは限らないので飛び出し量を減らした
工夫をしている
そしてガススプリングの配置の
設計順序として
1)扉の開閉方法の検討(大きさ、据え付け場所)
2)アブソーバーの設置位置のイメージ(左右取付)
3)開閉角度の設定(90度か120度か)
4)開閉行き過ぎストッパー、端部ロックの検討(インターロックも)
5)扉の重心位置と重さ(3DCADで重心を求めた、経験計算でも可)
ここまで線を引く設計なので今回は省略
以下選定と計算を説明するのに
6)ガススプリングのストロークを知ること
7)ガススプリングの力の範囲を知ること
8)設置位置の検討
6)、7)はカタログを見ること
ストロークは40~300くらいまで
長さは175~965
力は49~1413N(5kg~15kg)の範囲となる
他のメーカーにも強くて太いものなどあるが必要になり次第情報を得ればよい
8)設置位置の検討
結論から言うと以下のようになった
では具体的に計算していく
扉の重さが27kgだったので(フレーム+PET制電)
重心とハンドルの位置関係で手に掛かる負担が変わる
重心が真ん中であれば13.5kg程度で良いし
少し奥であれば13.5kg以下になる
今回はハンドルが992mm
重心が437mmなので少し奥よりである
何もない状態で一番重い状態が437/992x27=11.87kgとなり
やはり開閉アシストが必要なる
ガススプリングは左右に二本取り付けようと思うので
1本当たり半分になり5.94kg前後のアシストが必要だとわかる
ガススプリングはストロークによりヒンジ近くに設置することになるので
角度によって効率が下がるのでもう少しパワーが居る
今回はナベヤのカタログから
ストロークを見ながら全長が入るものを選ぶ
ナベヤのカタログは40~305ストロークまで選べるので
いきなり305STで設計するとストロークが足りないと長くできないので
手前から始める
CADに最大長さを入力し取付できそうなら次に進む
巨大化するので今回は200ストロークとした(経験にて)
最大長さ680~最小長さ470
この範囲に収まる 位置に設置しないといけない
90度前後開こうと思うので
ストローク200だとアブソーバーの回転軸からの距離は
150mm以下にしなければならない
ストロークが長いと機械が楽になると前述したのは
この回転中心からの距離を大きく取れるので
取付部やフレームの強度を無視できるほどになる
27kgのものを回転軸からの距離を50mm以下にすると
270kgくらいの力がひつようになり補強が必要になるのだ
取付位置をキリ良くすると131となった
ガススプリング扉開閉側取付位置(以下可動側と記載)
の取り付け位置から解説しようと
ヒンジから取付位置までの距離を一定にして検討を進める
上にした場合
扉が上に上がったときに死点を超えてしまい
保持できるほどの力を発生できなくなる
奥にした場合
扉が下にある時に
持ち上げる力をアシスト出来なくなるので
とりあえずその中間の45度の位置にした
重心に近いので 計算も楽である
ガススプリング固定側取付位置(以下固定側と記載)は
閉じた時に
最小長さが470mmなので
底付きしないようにの2mm手前で止める
そこでR472の円弧を引いておく
開けたときは最長が-10mmくらいになるのが
良さそうなので最大長-10mm=R670で引いておく
これで固定側を設置できる範囲が明確になる
上過ぎる場合や右過ぎる場合に
R472とR670線が交差した場合は設置部分に制限があるので
可動側の位置を見直すことをお勧めする
交点でも以下を満たせば良い
R472とR670の線の間であれば
固定側をどこにおいても良いのだが
これも死点を超えたり、力が弱くなりすぎたりするので
開可動部と閉可動部を直線で引いた位置の真下より作業者側が良い
真下より手前にする理由は
閉じたときに扉の自重で落ちることを狙い
上でスプリング保持するのを狙うためである
扉を作業者が閉める時重さの慣性が働くのもイメージしなければならない
これでガススプリングのおおよその設置は終わったが
どのくらいの力が必要なのかも計算が必要だ
扉自重の位置が水平で一番重量がかかるのだが
45度下がった位置では70%となる
真下を向いた角度ゼロの場合
力はヒンジに全て掛かり動かすのに必要な力もゼロとなる
今回の扉は27kgで水平の時はCOS90=100%なので
ヒンジ部に50%かかり13.5kgを2本のガススプリングで支える必要がある
ガススプリングは1本あたり6.75kg以上の回転力が出れば持ち上がることになる
実際は重心がヒンジから見てどのくらいの位置にあるかも重要になるので
その計算もする必要がある
計算しやすく
ハンドルの位置が992mmと1mに近いので
kg・mを用いてモーメントの計算をすすめる
重心の位置がヒンジ中心から437mmなので
扉モーメント=437/992x角度効率x27kgとなり
ハンドルの位置で重さが
上に上がった状態で8kg
中間の一番重いところで11.8kg
下で8.7kgとなった
これらをガススプリングで
上では保持して
中間では10kg以下にし
下では扉の自重で下がるものを選定する
ガススプリングが扉を開ける方向に作用する力を求める
縮んだときの力=831N
伸び方向対して回る方向が68.15度
作用する軸からの距離131.21mm=0.1312m
アブソーバー回転モーメント=831N/9.8xCOS68.15x0.1312mx2本=8.28kg・m
重心との差で0.4kgで閉じたときは下がったままになる
上に上がった状態では
伸びたときの力=539N
伸び方向対して回る方向が28.25度
作用する軸からの距離131.21mm=0.1312m
アブソーバー回転モーメント=539N/9.8xCOS28.25x0.1312mx2本=12.8kg・m
上がったときは4.6kgで上がったままになる
今回は開けたときに豪快に作業者の目の前に来る位置になったので
良いか悪いかは装置環境に寄るので適宜見直すこと
上での力を弱くしたい場合は
固定側を奥に持って行くか
可動部をヒンジに近づけるかのどちらかである
上がったときは低身長にハンドルを持って閉めるのは厳しそうなので
ハンドルの周辺に紐でも垂らしておくことにします
【失敗学】
今回は固定部と可動部の取り付けに自由度が高かったが
ガススプリングを中間の長さで使用する設計にすると
組付け時短くすることが出来ずに”組付難”になることがある
最長の状態で取付が出来て、その後ストッパーなどを後付け出来ると良い
意外にガススプリングを短くするのは人間の手では難しかったりする
あとガススプリングの端をストロークエンドストッパとして使えば
シリンダと同じで壊れることも気を付けたい
※追記 2020/05/15
以下でも選定計算や選定依頼できる
※ともに結果は英字で来る
エースコントロールジャパン
http://www.acecontrols.co.jp/cad/images/sizing.pdf
スガツネ
https://search.sugatsune.co.jp/product/r/rstabilus/
エースコンの選定レポート一部
スガツネの選定レポート一部(STABILUS)
自分の結果とほぼ同じだと安心